医師紹介

院長から皆さまへ

 最近のがんセンターの発表からみれば、乳がんは、女性の死亡率第5位、がん罹患率第1位、11人に1人が乳がんを発症するといわれています。たくさんの方が乳がんを罹患されていますが、検診が普及し、早期で発見される方が増え、そして治療成績が向上したために、死亡率は5位と、大腸がんや肺がん、胃がんに比べて低いのです。近年の成績からは乳がんに罹患されてもほぼ9割の方が生還されています。

 しかしそれでも1割の方は不幸な結果をたどられています。
どのような方が9割に入り、どのような方が1割に入るのか?

 私は外科医師としてほぼ20年以上 乳腺医療に携わり、2010年に姫路に赴任してからも最前線で3000人以上の乳がん患者さんの治療に向き合ってきました。乳がんが疑われ、あるいは乳がんと診断され、不安でいっぱいで受診された患者さんに対して、私はいつもその経験からこう話しかけてきました。

「乳がんは9割の方が治ります。毎年、それを専門とする医師を受診し、きちんと検診を受けてきた方がもし治癒せず、亡くなってしまうのなら、9割も治るはずはない。きちんと治療すれば治りますよ。」

 乳がんは早期発見されればまず治癒します。ガイドラインが整備され、学会で認定された専門医が日本中で治療を行っている現在、“名医”を探してうろうろする必要はありません。名医でなければ治せないなら、9割も治るはずがない。逆に末期状態で発見されたら、どんな名医であっても、いかに医療が進んでも治せません。

 2年おきに検診クーポンが配られ、勤務先では当たり前のように検診マンモグラフィが行われていても、それでもその網から漏れてしまう方がおられます。

「3か月前からしこりに気が付いていたのですけれど…」「形がすこしおかしくなってきていたのに気が付いたのは半年前で…」「もういまさら受診しても手遅れだと思って…」

 あと1割の人を助けるためには、先端の機材や、最新の抗がん剤、磨き抜かれた手術の技が重要ではありません。気楽に、定期的に、そして安心して受診できる身近な施設がその地域に存在していること、それがなにより重要なのです。

 そして重要なもう一つのポイント、それは「正しく検診を受けていく」ことにあります。

 正しくとは何のことを言っているかわからない方もおられでしょう。たとえば現在検診のためのクーポンは2年に1回配布されます。それを見て、2年に1回が適切な検診頻度と思われている方も多いのではないでしょうか。けれどもある女性は母親も祖母も乳がんに罹患している、こうした方はほかの方同様の2年に1度の検診でいいでしょうか。自分は若いころ針で検査を受けてADHと呼ばれる前がん病変を指摘されている、こうした方も一般の方と同じ頻度で検診を受けていくのは危険です。

 そして医療の進歩はがんの原因となる遺伝子の異常を次々と発見しています。こうした方は先天的にがんに罹患するリスクを持っておられるため、通常の検診では対応できないとされています。

 私はまだ若く、子供を産んでいないので、マンモグラフィを受けても所見が分かりにくい高濃度乳腺と言われた、こうした方も通常の方同様にマンモグラフィだけで検診を受けていくことはリスクがあります。

 通常の検診では拾えない乳がん、見つかりにくい乳がん、それは確かに存在します。しかし、その人その人に応じた「正しい検診」を受けていくことで早期で発見することが不可能ではなくなります。それでは自分はどういう検診を受けていくことが「正しい」のか、それは我々のような市中の最前線のクリニックが、個々の女性に対して指導し、フォローしていく役割を負っているといえるでしょう。

「今年の検診も大丈夫だった。よかった。さあ、気分を一新してまた1年頑張ろう。」

 自分はこの地域でがん治療の最前線を担ってきました。これからはその経験を生かして、皆さんの健康な日常に寄り添い、それを守っていく役割にシフトします。そして自分の命の続く限り、それを守り、安心を与え続けることのできる医療の一翼を担う存在でありたいと思っております。(令和3年4月)

院長 渡辺 直樹

経歴

平成元(1989)年3月 岡山大学医学部卒業
平成13年(2001)3月 岡山大学医学部第一外科学教室大学院卒業 博士号取得
平成7年(1995)8月 公立学校共済組合中国中央病院勤務 医長
平成12年(2000)6月 鳥取市立病院勤務 医長
平成15年(2003)11月 岡山大学医学部消化器・腫瘍外科学教室勤務 医員
平成16年(2004)6月 公立学校共済組合中国中央病院勤務  乳腺・呼吸器外科部長
平成22年(2010)10月 姫路赤十字病院勤務  乳腺・呼吸器外科部長
平成26年(2014)4月 姫路赤十字病院勤務  乳腺外科部長
令和3年(2021)4月 現職

所属学会

日本外科学会、日本乳癌学会、日本甲状腺外科学会、日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会、日本遺伝性腫瘍学会、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)など

資格・役職

  • 日本外科学会 指導医、専門医、認定医
  • 日本乳癌学会 指導医、専門医、認定医
  • マンモグラフィ読影認定医 AS判定
  • 乳腺超音波診断認定 A判定

理事長のごあいさつ

西原院長

 播磨地方で初めて乳腺疾患を専門とする「にしはら乳腺クリニック」を開設させていただいて12年目になりました。クリニックで発見された乳がん患者さんも、年間200人を超え300人に近づいています。複数回来院されている方で発見された乳癌患者さんの内、1㎝以下(乳管内癌も含む)の患者さんが、全発見乳癌の年間平均約70%以上を占める状況です。苦しい抗がん剤治療をしなくてよい患者さんはさらに多くなり、笑顔で当院に通院されている手術後の患者さんも着実に増えてまいりました。

 乳腺クリニックは乳癌患者さんにとって最初の医療機関となります。より早期で乳癌患者さんを治療現場に導くために、乳房に不安をもたれた女性が安心して来院していただくことがとても大切です。そのためにも、職員は全員女性で、快適な空間にも心がけております。

 現在、「にしはら乳腺クリニック」が果たすべき役割は、非常に大きいものになりつつあります。多くの早期の乳癌患者さんを治療現場にお送りし、手術・化学療法・放射線治療を終えられた患者さんが日常生活を普通に過ごされるように、診療に配慮をいたしています。当院は播磨地域の乳腺診療のハブ的な役割を担うようになりました。この様な乳腺診療の発展と継続は社会にとって欠かせないものになり、この度令和3年4月に、姫路赤十字病院から渡辺直樹先生を新院長としてお迎えしました。これから益々求められる乳腺診療の革新にもお応えできる体制つくりも整えます。 また私自身一医師に立ち戻り、新しい院長を支えて、より多くの避けることのできない乳癌罹患患者さんのお命をお守りすることに邁進いたします。また事業を行うものとして、女性である職員の皆様が、社会の模範となるべき経済的自立を果たすことにも気配りしてまいります。(令和3年4月)

理事長 西原 徳光

経歴

昭和33年 兵庫県加古川市生まれ
昭和51年 白陵高校卒業
平成2年 大分大学医学部(旧大分医科大学)卒業
神戸大学医学部第一外科入局
平成6年 神戸大学医学部第一外科「乳腺研究室」に所属し、乳がん基礎研究に従事
平成8年7月10日 医学博士号取得
平成8年 兵庫県立がんセンター(旧兵庫県立成人病センター)で乳がんの診断・治療に専念
平成12年 ブレストピアなんば病院(宮崎県宮崎市)乳腺科勤務
乳腺科単科の病院で、検診マンモグラフィを含め乳がんを中心とした臨床乳腺疾患の診断治療に専念
平成16年より 姫路市医師会の乳がん検診活動として、検診マンモグラフィ2次読影を担当
平成22年5月1日 にしはら乳腺クリニック院長
平成24年4月 加古川西市民病院外科(加古川中央市民病院乳腺外科)乳腺外来担当(平成29年5月で終了)

資格・役職

  • 医学博士(神戸大学)
  • 日本乳癌検診学会評議員
  • 姫路市医師会検診検討(乳)部会委員
  • 日本乳がん検診精度管理中央機構(マンモグラフィAS評価読影医)