乳腺と向き合う日々に

2025.07.26

検診で見つかった乳がんと、自分で見つけた乳がんと

2025年5月にジャン・シーリー医師によって発表された最新の研究結果によりますと、乳がん検診で乳がんが見つかった女性と比較して、症状が出た乳がんの女性では乳房切除、化学療法の使用、乳がんによる死亡率が有意に高いことが明らかになっています。
Impact of Method of Detection of Breast Cancer on Clinical Outcomes in Individuals Aged 40 Years or OlderRadiology: Imaging Cancer Vol. 7, No. 3: May 30 2025https://doi.org/10.1148/rycan.240046

乳がんはたとえどんなに気にされていない方であっても、また検診を受けておられない方でも、いつか必ず発見され、診断されることになります。命に係わる疾患だからです。
ただがんは恐ろしい病気です。現代でもそのすべてが治せるわけではない。それが早期発見でなければ、まして末期で発見されてしまえば治癒させることは難しい。
「余命 ○○か月です」というテレビなどででてくるあのシーンにつながることになります。

がんの検診とはもともとそうならないために、何としても早期で発見するために行っているものであり、受診もされていることと思います。症状があってから受診した、それが実はがんによるものであった、その状況の恐ろしさは皆さんも常識としてご存じのことでしょう。

ジャン・シーリー医師らによる新たな研究により、定期的な検診が多い年齢層(50~74歳の女性)と比較して、マンモグラフィー検診の実施頻度が低い年齢層(40代の女性および75歳以上の女性)では、症状から乳がんが発見される割合がはるかに高いことが明らかになりました。

Radiology: Imaging Cancer誌に掲載されたこの研究では、乳がんを患った女性821名(平均年齢62.5歳)のデータを解析しました。

それによると40代女性では72.9%、75歳以上の女性では70.4%が症状があって乳がんと診断されていたのに対し、50代女性では49.5%、60~74歳女性では33.3%と明らかに少ない割合であったことが明らかになりました。つまりマンモグラフィ検診の対象外の年齢層の女性ではほぼ7割以上の方が症状があってから病院を受診し、乳がんと診断されている。対して50から60歳代の検診の対象年齢では症状から発見されている乳がんは半分以下でした。

症状が認められた乳がんは乳房切除、化学療法による治療、進行した症状の出現率が有意に高いことにも関連していました

・症状から乳がんが発見された女性では、進行がんである割合が6.6倍高いという結果でした。

・化学療法が必要となる可能性はほぼ2倍でした。

・乳房切除が必要となる可能性もほぼ2倍でした。

シーリー医師はまた、症状が認められたがんの女性のうち、6.7年間の追跡期間内に死亡した割合が21.7%であったのに対し、検診で乳がんと診断された女性では14.5%であったことを指摘しました。

シーリー博士によると、症状が認められたがんの女性では死亡率が1.6倍高かったとのことです。

「乳がん検診による早期発見の促進と、乳がんの発見方法が予後予測に大きく影響することを示す必要性が、今回の研究で改めて認識されました」と、オタワ病院画像診断科乳房画像診断部門長のシーリー医師は強調しています。