乳腺と向き合う日々に

2024.06.02

乳腺の濃度は修正可能です ・・・その2

食生活パターンは乳腺濃度に影響しますか?

食事性脂肪が乳腺の濃度に及ぼす影響に関するデータは、主に観察研究から得られたもので、現状では確定しているとはいいがたく、一貫性がありません。230人の若者を無作為に低脂肪食に割り当てた追跡調査では、グループ間で乳腺濃度に変化はありませんでした。しかし、1508人の女性を対象としたミネソタ乳がん家族コホート研究では、飽和脂肪と乳製品の摂取が閉経前女性の乳腺濃度の減少と関連していました。

地中海式ダイエットと、乳腺濃度を下げ、乳がんの発生率を低下させるのではないか、とその役割が調査されています。
424 人の女性を対象とした横断的研究では、地中海式ダイエットの摂取と 乳腺濃度の間に逆相関が示されました。
食事、身体活動、マンモグラフィー (DAMA) 試験では、424 人の閉経後女性が 4 つの治療介入 (食事、身体活動、食事と身体活動、およびコントロール) のうちの 1 つに無作為に割り当てられ、乳腺濃度の変化が評価されました。食事介入は、糖負荷が低く飽和脂肪酸レベルが低い植物ベースの食品で構成されていました。食事介入グループと身体活動介入グループの両方で、コントロールと比較して乳房密度の割合がわずかに低下しました。
欧州がんと栄養に関する前向き調査 (EPIC) フィレンツェ縦断研究では、炭水化物摂取量が多くグリセミック負荷が高い食事が 乳腺濃度の増加と関連していることがわかりました。

高血糖が高インスリン血症を引き起こし、インスリン受容体の活性化とインスリン様成長因子の増加を招き、これがエストロゲンと相乗的に作用して乳腺上皮の増殖を引き起こし、乳腺濃度の増加につながります。こうした影響が関与している可能性が考えられます。

まとめ
血糖値が高く維持される食事はインシュリンの分泌を促します。インシュリンはエストロゲンと相乗作用して乳腺濃度を上昇させるように働きます。
そのことを考えれば、高血糖につながる糖分の多い食事は避け、適度に運動を行う、これは常識的な生活態度ですが、それが乳腺濃度を下げることにつながります。

カフェイン摂取は乳腺の濃度に影響しますか?

一部の疫学研究ではカフェイン摂取により乳がんのリスクが減少すると示唆されていますが、カフェイン摂取と乳腺濃度に対するその役割に関する研究は限られており、一貫性がありません。

看護師健康研究および看護師健康研究のコホートのデータによると、閉経前女性ではカフェイン摂取と乳腺濃度に関連はなかったが、カフェイン抜きコーヒーを1日2杯以上摂取すると乳腺濃度が増加することが示されました(p=0.03)。
閉経後女性では、カフェイン抜きコーヒーの摂取量とコーヒーの総摂取量の両方が乳房密度の割合と逆相関していることが認められました(p=0.04)。
これらのデータは、マンモグラフィーの日付より前に質問票に記入した4130人のがんのない女性から推定されました。カフェインはエストロゲン代謝を変化させ、血中エストロゲン濃度を低下させる可能性があり、カフェインには乳腺濃度を低下させる可能性のある抗酸化作用があるとされています。しかしカフェイン摂取が乳腺濃度に及ぼす影響を明確に定義するには、さらなる研究が必要です。

まとめ
・カフェインは過度に接種しなければ少なくとも悪影響はなさそうです。ただ乳腺濃度を下げる効果を期待して過度に摂取することも現状は勧められません。また砂糖を入れて飲まれれば先の血糖の問題に関係して悪影響が発生しそうです。何事も適度適量なのでしょう。

有酸素運動は乳腺の濃度に影響しますか?

さまざまな研究で、身体活動と乳腺濃度の潜在的な関連性を評価しようと試みられてきました。

5,703人のデンマーク人女性を対象とした前向きコホートでは、身体活動と乳腺濃度の関連性は認められませんでした。
アルバータ州の身体活動と乳がん予防(ALPHA)試験では、有酸素運動がベースラインの乳腺濃度に影響を与えるかどうかを評価するために、320人の閉経後女性を運動群(週5日、45分)として介入する、そして介入しない対照群に1年間ランダムに割り当てました。この研究では、運動をすることで乳がんそのものの発生リスクは下がっていることがわかりましたが、乳腺濃度そのものにはグループ間で有意な変化は見られなかったことがわかりました。
DAMA試験では、身体活動介入群にランダムに割り当てられた女性で、対照群と比較して乳腺濃度が中程度に減少したことが示されました。

2012 年に発表された大規模なシステマティックレビューでは、このテーマを扱った 20 件の研究を分析および比較することで、身体活動と 乳腺濃度の関係を評価しました。結論としては、身体活動と乳腺濃度の関連性を示す説得力のある証拠はないというものでした。

乳腺濃度に対する有酸素運動の効果の欠如は、身体活動が乳房の脂肪部分にのみ影響し、線維腺領域には影響しないという事実によって説明できます。現在のデータに基づくと、こうした有酸素運動などの適度の身体活動は乳がんのリスクを低下させますが、そのメカニズムは乳腺濃度を下げることでは説明できない、別の理由を介している可能性があります。

まとめ
・有酸素運動を頑張れば、体脂肪が減り、乳がんに罹患するリスクは下がるようです。しかし脂肪は減っても乳腺組織そのものは減少することはなく、マンモグラフィ上での乳腺濃度は影響がないことがわかりました。

喫煙は乳腺の濃度に影響しますか?

喫煙は、エストロゲン(女性ホルモン)の受容体部位において、エストロゲンを代謝し、活性が最小限となるように促進するため、抗エストロゲン効果があります。
さらに、喫煙は、(1)チトクロムP450酵素の誘導によるエストロゲンの肝臓代謝の増加と性ホルモン結合グロブリンレベルの上昇、および(2)アロマターゼ酵素活性の阻害によるバイオアベイラビリティの低下を通じて、エストロゲンレベルの低下をもたらします。(難しいですね。要は女性ホルモンを下げる働きをする、ということです。喫煙はやはり女性らしさの大敵ですね。)

いくつかの研究では、喫煙と乳腺の濃度の間には逆相関関係、つまり喫煙すればするほど乳腺の濃度が下がる、可能性があることが示されています。

各グループ203人の女性を対象とした症例対照研究では、喫煙者は非喫煙者と比較して、高リスクのマンモグラフィ実質パターンを示す可能性が低くでました(OR、0.37, 95%CI, 0.14-0.94)。
横断的コホート研究では、喫煙者である閉経前および閉経周辺期の女性は、非喫煙者と比較して乳腺濃度が7.2%低く、それは統計的に有意でした。閉経後女性の横断的研究の結果では、調整後平均乳房密度の割合は、喫煙者および元喫煙者( P = .003)の方が非喫煙者( P = .006)よりも有意に低いことが示されました。
42 5356 人の女性からなるデンマークの食事、がん、健康コホートでは、喫煙と乳腺濃度の関連性が最も強かったのは、16 歳未満で喫煙を開始し、1 日に少なくとも 15 本喫煙し、喫煙歴が少なくとも連続5 年以上あり、喫煙期間が少なくとも 30 年、最初の出産前に少なくとも 11 年間喫煙していた女性でした。43 23,456人の女性を対象とした大規模な人口ベースのコホート研究では、喫煙は乳房密度の割合と逆相関し、主に脂肪組織である密度の低い領域が広がる正相関していることがわかりました。これらの結果は、喫煙が乳房の脂肪組織を増加させ、乳腺の濃度を減少させるメカニズムを裏付けています。

喫煙は乳がんそのもののリスク増加と関連しているが、喫煙は乳腺脳濃度は下げるように働くように見えることから、喫煙関連の発がん物質は乳腺濃度の増加を伴わない経路を通じて乳がんのリスクを増大させる可能性があります。

まとめ
・驚きですが、喫煙は乳腺の濃度を落とす方向に働くようです。ただその有害物質によって乳がんそのものは減らないどころか増やす可能性もあるので、プラスマイナス0ですね。

BMI (肥満指数)は乳腺濃度に影響しますか?

出生体重が乳腺の濃度に及ぼす影響は明らかではありません。

閉経前女性では、乳腺の濃度と若年期のBMI上昇との間には曖昧な関連がありますが、閉経後女性でははっきりとBMIが上昇すれば、つまり肥満すれば乳腺の濃度は下がります。

BMIは、乳腺密度領域および乳腺密度率とは負の関連があり、乳腺の濃度は下がります。そして逆に非乳腺密度領域、つまり脂肪で満たされた部分は当然ですが正の関連があることがわかっています。

根治的乳腺切除手術(乳房全摘術)を受けた573人の女性を対象に、マンモグラフィーと磁気共鳴画像法を用いて乳房組織の特徴を評価した観察研究があります。その結果は、BMIが25以上の女性は乳腺濃度が低く(P < .0001)、乳腺実質である線維腺組織も少なかった(P < .0001)ものの、乳腺実質の背景に存在している乳腺以外の実質の増強(BPE)は高いとする結果が出ました(P = .005)。
BPEは乳腺実質の線維腺組織の血管分布に応じて変化し、女性ホルモンに敏感であるとされます。BPE の上昇は、太りすぎまたは肥満の女性の乳がんのリスクを高める潜在的なメカニズムを示している可能性があります。

肥満手術を受けた女性を対象とした複数のコホート研究では、乳腺密度が脂肪性乳腺の女性は体重減少とともに乳腺の濃度が増加する傾向が見られ、これは乳腺実質の線維腺組織の減少が比較的緩やかであるのに対し、乳房脂肪組織が全体的に減少したためである可能性があります。
乳腺密度が散在性や不均一高濃度の女性は、著しい体重減少があっても密度の有意な変化は見られませんでした。

BMIが上昇すれば乳腺濃度は相対的に下がります。しかしBMIの上昇はそれ単独で乳がんが発生する危険因子です。そのため乳腺濃度と肥満は、乳がんのリスクを上昇させる別の経路を持っている可能性があります。

まとめ
・この章は難しいです。肥満すれば皮下脂肪は当然増えます。乳腺実質のそのものが増えることも、インシュリンのところでも触れましたが事実でしょう。ただ実質が増えるよりも、脂肪の増殖の割合が高いため、結果として乳腺濃度は下がります。
・高い乳腺濃度は乳がんのリスクです。低い方が乳がんリスクは下がるのですが、脂肪によって置き換わることで乳腺濃度が下がっている場合はそうとも言えないようです。それはその分、乳腺組織そのものも刺激を受け、増加しているからであり、これを文中ではBPEの増加、と表現しています。
・結論として肥満することによって乳腺濃度を下がりますが、肝心の乳がんのリスクは下がりません。

雲行きが怪しくなってきました。結局どうしたら乳腺の濃度は下がるの?いまのところいい方法を教えてくれていないように思うんだけれど・・・・・・・・・・・・・その3へ続きます。