乳腺と向き合う日々に

2026年03月

2026.03.07

AIなのか、タモキシフェンなのか、で思うこと

AI(アリミデックスやフェマーラ、アロマシン)なのか、SERM(タモキシフェン、トレミフェン)なのか、これが実はとても深い問題を含んでいるのです。

簡単に言い切れば、乳がんによる死亡を抑制してくれる効果はAIを100点としたらタモキシフェンは89点です。たしかに弱い。

そして副作用に関しては代表的なものを挙げるとタモキシフェンは子宮体癌、AIは骨粗しょう症になるでしょう。

え、副作用ががんなの、癌の再発を抑えるために他のガンが発生してたら意味ないじゃん。それならAIの圧勝でしょう。皆さんもそう思いますか?私は違う考え方をします。

これに関して、詳しくはこのブログで何度も触れてきましたが、子宮体がんはタモキシフェンを飲んでいなくても65歳以上であれば年間千人に一人は発症します。つまり0.1%です。飲んでいる方で多く見積もって1000人に二人なので0.2%と考えられます。

AIによる骨折の発生ですが、5年以上継続した場合、1.35倍になります。65歳以上の女性では10万人あたり年間約 646人 が大腿骨骨頭骨折を経験するとされていますので、千人に6人、0.6%とされます。もちろんこれは大腿骨骨頭に限定していますので、腰椎の圧迫骨折なども含めるともっと確率は上がります。

そしてもう一つ大事な情報ですが、タモキシフェンは骨を強くする、守る方向に働きます。AIが子宮体がんの確率を落とす効果があるかについては報告はありません。そしてタモキシフェンの子宮内膜への刺激は薬をやめればなくなります。つまり可逆的ですが、AIによって進んだ骨粗鬆症は、たとえAIをやめても原則元には戻せません。

現状 乳がん術後のホルモン治療は10年継続するように指導されている方は多いと思いますが、閉経後に限定した場合、その多くは60歳以上の女性になると思いますが、70歳になるまで10年ずっとAIで行くかどうかは、慎重でなければならない、と私は考えています。がんを抑制する効果は高くても、骨が脆くなってしまって、Quality of Life(=QOL) 生活の質、が下がってしまったら、元も子もない、と考えているからなのです。

ノースカロライナ大学チャペルヒル校ラインバーガー総合がんセンターのダニエル・R・リチャードソン医学博士(理学修士)らが最近発表した研究結果では、706人の進行したがん患者さんのうち、生存期間の延長を優先したのはわずか8.4%であったのに対し、QOLの維持を優先したのは71.7%で、残りはどちらでもないか中立だったと報告しました。

さらにクラスターランダム化試験の二次分析によると、進行がんを患う高齢患者は生存期間の延長よりも生活の質(QoL)の維持を優先する傾向があり、そして結局患者さんがどちらを希望し、優先しているかどうかに関わらず、こうした好みによって患者の転帰に差は生じなかったと言うこともわかりました。つまり事前の治療変更、またはグレード 3 ~ 5 の治療関連有害事象 (TRAE)、入院、死亡率などの下流の臨床結果がどちらを優先するかが異なる患者グループ間で比較しても結局差がなかったのです。それはおそらくそういった患者さんの志向によって、治療者が内容を変更することがないことも示していると考えられました。

編集者のメモオクラホマシティにあるオクラホマ大学ヘルス・スティーブンソンがんセンターの医学博士、公衆衛生学修士、経営学修士であり、JAMA Oncologyの副編集者でもあるライアン・D・ニップ氏は、「がん患者の大半は高齢者であり、この集団の QoL の優先事項を評価し、対処する研究をさらに進める必要がある」と書いています。「この研究が示したように、がんを患う高齢者は生存期間の延長よりもQOLの維持を優先することが多いのですが、私の知る限り、こうした患者のQOL向上を目的とした介入を評価した研究はほとんどありません」と彼は指摘しました。「こうした取り組みには、患者中心のケアを促進し、老年腫瘍学の分野で行われている革新的な研究に基づいた介入の開発と検証が含まれます。」

乳がん術後のホルモン治療に関しても、この研究と同じことが言えそうな気がします。

少なくとも65歳を超えた方に関しては、ホルモン治療を受けるかどうか、だけにとどまらず、その得られる効果、そして副作用も説明した上で、AIを選ぶか、SERMを選ぶか、話し合う必要があると私は考えます。そしてはそれはホルモン治療開始のその時だけではなく、たとえば1年ごとに副作用の出現やその程度を見極めながら、繰り返し話し合っていく必要があると思うのです。

そしてそうして患者さんの志向を聞いて、ホルモン剤を選んでいった場合と、医療側が最善と思われるホルモン剤を一方的に決めていった場合で、生存予後にどの程度の差が生じるのか、生じないのか? そしてその患者さんの人生の満足度にどのような影響が及ぶのか、ライアン先生の主張されているように、きちんと調査されるべきではないか、と私は考えます。

まとめ 

進行がんを患う高齢者を対象とした研究では、生存期間の延長を優先したのはわずか8.4%であったのに対し、生活の質(QoL)の維持を優先したのは71.7%でした。

生存を優先した患者とQOLを優先した患者の間で、初期治療の変更や臨床結果に有意差はありませんでした。

これらのデータは、現在の腫瘍治療提供システムが患者の好みに対応できていないことを示唆していると研究者らは述べました。

私はこの結果をAIとSERMに準えて(なぞらえて)みました。

乳がんを患った高齢者を対象とした研究では、生存期間の延長を優先したのはXX%であったのに対し、生活の質(QoL)の維持を優先したのはZZ%でした。(もちろんまだそのデータはありません。)

生存を優先した患者とQOLを優先した患者の間で、初期治療の変更や臨床結果に有意差は〇〇した。(差が出るでしょうか? 出ないのでしょうか?)

このデータから、今後は特に高齢の女性乳がん患者さんにおいては、患者さんの志向を加味してホルモン剤を臨機応変に決定していく****(べきなのでしょうか? まだわかっていません。)