2026.04.06
「先生、サプリメントとか、飲んじゃだめですか?」
これは患者さんから本当によく尋ねられる質問で、昔からずっと変わりません。
がんの治療には、手術・抗がん剤・放射線治療などの「標準治療」があります。
これに対して、「補完代替医療(ほかんだいたいいりょう)」とは、簡単に言い切ってしまうならばこれらの治療以外の方法を指します。補完医療と代替医療があるのですが、その違いは、補完医療は標準治療と「一緒に使う」もので、ヨガ、アロマ、サプリメントなどです。代替医療は標準治療の代わりに使うもので、民間療法のみで治療しようとする場合です。重要なのは、代替医療だけでがんを治すことは、現在の医学では証明されていないという点です。というよりも証明されればそれは標準治療だからです。
最近 JAMAという雑誌に、この質問に対するしっかりした答えが掲載されています。これをここでまとめてみたいと思います。

はじめに
過去数十年にわたる乳がんの外科的および内科的治療における革新により、乳がんの全生存率は向上しています。手術、化学療法、放射線療法、内分泌療法、免疫療法などの従来の治療法は確実に進歩し、結果を出しているにもかかわらず、一部の患者さんは依然として補完代替医療(CAM)を選択し、施行しています。そこで本研究では 乳がん患者におけるCAMと生存率との関連性を明らかにしたいと考えました。
方法ですが、本研究では、2011年から2021年にかけて乳がんと診断された女性患者に関する国立がんデータベースのデータを分析しました。生存期間は、従来治療群、従来治療と代替医療併用群、および無治療群の間で比較されました。データは2025年5月から2025年12月にかけて分析されました。補完療法または代替療法については、非医療従事者によって実施される治療と定義しました。
その結果について、乳がんの女性患者2,169,202人のうち、2,157,219人(年齢中央値[IQR]、62歳[52-71歳])がサンプルに含まれました。
合計2,106,665人(97.6%)が従来療法を受け、273人(<0.1%)がCAMのみを受け、568人(<0.1%)がCAMと従来療法の併用を受け、49,713人(2.3%)が治療を受けていませんでした。
従来療法を受けた患者と比較して、CAMのみを受けた患者(調整ハザード比[AHR]、3.67、95%信頼区間、3.03-4.44、P < .001)または治療を受けなかった患者(AHR、3.53、95%信頼区間、3.48-3.58、P < .001)は死亡リスクが最も高いという結果になりました。
*ハザード比ですが、「従来療法を受けた患者と比較して、CAMのみを受けた患者ではハザード比が3.67でした」という表現によって、従来療法を受けた患者と比較して、CAMのみを受けた患者では3.67倍死亡する確率が高い、という意味になります(筆者注)
従来療法とCAMを併用した患者は、従来療法のみを受けた患者と比較して、内分泌療法(ステージIIでは40.7%対65.2%、P < .001)および放射線療法(ステージIIでは59.5%対36.6%、P < .001)を受ける可能性が低いということが分かりました。
従来療法とCAMを併用した治療を受けた患者は、従来療法のみを受けた患者と比較して、死亡率が高いという結果でした(AHR 1.45、95% CI 1.22-1.72、P < .001)。

上のグラフはカプランメイヤー法によるもので、X軸で右に行くほど、時間が経過していることになります。12moと書いてあればそれは12か月経過した時点を指します。Y軸は生存率です。時間経過が0の時点では全員が生存していても、1年2年と経過するにつれ、亡くなる方が出て、生存されておられる方は減っていきます。つまり傾きが大きいグラフほど、生存率が低いという結果になります。
Traditional: 従来の標準治療
Combination: 標準治療と補完療法の併用
CAM: 代替療法のみ
No Therapy: 治療なし
今回の結果で、代替補完療法のみの患者さんが、治療なしよりも生存されていることには驚きました。そういう見方で見る方もおられるかもしれません。
ただ今回の研究は大規模ですが、それだけに様々な制限がかかっていると考えられます。
たとえば 今回の研究において代替療法とされた分類では、実は選択した多くの患者が見落とされている可能性があります。たとえば無治療とされても、実は補完療法を受けておられたり、標準治療のみとされていても、補完療法をこっそりされていたりです。その中には治療結果が大きく異なる患者もいるかもしれません。私の経験からしても、補完療法を併用されている方は0.1%程度では収まらないと思います。
ただそれを考えても、これだけの規模で比較すれば、小さな誤差は埋められると思います。
補完療法を受けられる方は、標準治療をきちんと完遂されない方が多く、そのため、治療成績が落ちる。
代替療法では、標準治療に成績では及ばない。
このことは今回の結果から明らかなのではないでしょうか?
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